症状を完全になくすのは、難しいかもしれません。でも、少し楽にする方法はあります。今夜試せること、明日試せること、漢方や市販薬、受診のリアル——順番に整理していきます。眠れない夜の呼吸法、食欲がない時の最低限、動悸が出た時の対処、薬への抵抗感がある方への漢方の選択肢まで、ひとつずつ。
この記事でわかること
ペットロスで身体症状が出るのは自然なこと
強い悲しみのストレスは、自律神経を乱します。心と体はつながっているので、悲しみが体に出るのは自然なことです。
- 典型的な反応:眠れない・食べられない・動悸・息苦しさ・頭痛・めまい・倦怠感
- 多くは一時的なもので、波がありながら少しずつ落ち着いていきます
- でも、長引くと体力を削り、回復を遅らせる悪循環になることも
- 「我慢する」より「少し楽にする方法を試す」方が、結果的に早く回復します
「症候群かどうか」「自己診断したい」方は、姉妹記事「ペットロス症候群|症状チェックと、つらさを抜けていくために」をご覧ください。本記事は「具体的にどう楽にするか」の実践編です。
★眠れない夜にできること
悲しみで眠れない夜は、誰にでもあります。「眠れない自分」を責めないことから始めてください。
寝ようとしないでいい
- 横になるだけで十分:睡眠の8割の回復効果は、横になっているだけでも得られると言われます
- 「寝なきゃ」のプレッシャーが眠りを遠ざける:眠りは追いかけるほど逃げていきます
- 眠れないことを責めないでください
その夜試せること
- 温かい飲み物:白湯・ハーブティー(カモミール・ルイボス)・ホットミルク。カフェインは避ける
- 軽いストレッチ:5分でいい。肩・首・背中をゆるめる
- 4-7-8呼吸法:次のセクションで詳しく
- 単調な音:ホワイトノイズ・ヒーリング音楽・YouTubeの「リラックス音」
- 写真を見て話しかける:敢えて思い出を辿る時間に
- 涙が出るなら、抑えないで
避けたいこと
- スマホ・SNS(不安系の情報・ブルーライトが眠りを遠ざける)
- 強いアルコール(眠っても質が落ちる)
- 夕方以降のカフェイン
数日続いたら
- 漢方を試す選択肢(後述)
- 市販の睡眠改善薬(ドリエル・ナイトミン等)
- 1〜2週間以上続くなら、心療内科の検討を
★4-7-8呼吸法(不眠・動悸・不安に)
眠れない夜・パニック・動悸・不安の時に効くとされる呼吸法です。アメリカのアンドルー・ワイル博士が提唱した方法で、副交感神経を働かせてリラックス状態に導きます。1セット約1分。
やり方
- 口から、お腹の空気を完全に吐き切る
- 口を閉じて、鼻から4秒かけて息を吸う
- 7秒間、息を止める
- 口から8秒かけて、ゆっくり息を吐き切る
- これを4回繰り返す(1セット)
ポイント
- 吸う時間の2倍を吐くのが鍵(4秒:8秒)
- 仰向けに寝て、肩幅に足を開き、手のひらを天井に向けるとさらに効果的
- 初心者は4回(1セット)から、慣れたら2〜4セットまで
- 秒数通りいかなくても気にしないで。続けるうちに自然にできるようになります
★食欲がない時の最低限
強い悲しみで食欲がなくなるのは自然なことです。「3食しっかり」を一旦諦めて、最低限で乗り切る方が現実的です。
食べられない自分を責めない
- 1日1食でも、命を保つには十分です
- 1口でも食べたら、自分を褒めて構いません
- 食べたい物だけ食べる。栄養バランスは一旦無視で大丈夫
最低限取りたいもの
- 水分:1日1.5L目安。脱水で身体症状が悪化します
- ゼリー飲料(ウィダーインゼリー等):栄養補助・噛まなくていい
- 果物:小さく切って・口に入れやすい形に
- スープ・味噌汁:温かさで胃が動きます
- 子供用のおやつ(ビスケット・カステラ・プリン):高カロリー・少量で済む
- ヨーグルト:腸に優しく、消化に負担がかかりにくい
無理して食べないコツ
- 1日1回でも、食事の時間を作る
- 家族と食卓を囲む(食べなくても座るだけで構わない)
- においに反応して気持ち悪くなる時は、無理しないで
- 立ち上がれない時は、誰かに用意してもらう
受診の目安
- 1か月で5kg以上、体重が減った
- めまい・ふらつき・髪が抜ける
- 立ち上がれない・倦怠感が強い
これらがあるなら、内科で身体の状態を、心療内科で心の状態を、両方確認するのが安心です。
★動悸・息苦しさが出た時
家族を失ったあとに、動悸・息苦しさを感じる方は珍しくありません。多くは自律神経の乱れによるものですが、心臓のサインと区別する必要があります。
今すぐできる対処
- 4-7-8呼吸法を試す(前述)
- 冷たい水をコップ1杯飲む(迷走神経に働きかけて落ち着く)
- 窓を開けて新鮮な空気を入れる
- 座る(横になるより、座っている方が呼吸しやすい)
- 「これは一時的なもの」と自分に言い聞かせる
受診の流れ
- まず内科で身体の異常チェック(心電図・血液検査)
- 「ペットを亡くしてから動悸が」と伝えていい
- 内科で異常なしなら、心療内科へ
- 詳しい医療接続は「ペットロス症候群」のH2-7「医療接続の実際」へ
頭痛・めまい・倦怠感
頭痛・めまい・体のだるさは、自律神経が乱れた時の典型的な症状です。
- 水分を意識的に取る:脱水が頭痛・めまいの悪化要因になります
- 横になって体を休める:「動かなきゃ」と思わなくていい
- 漢方の選択肢:半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)・抑肝散(ヨクカンサン)など。後述のH2-9で詳しく
- 続くなら内科+心療内科の両方で
体を少し動かす(運動・朝の光)
強い運動は要りません。「動かす」だけで、悲しみのストレスが流れる感覚が生まれます。
軽い運動
- 朝5分の散歩:朝の光が睡眠リズムを整える効果も
- ストレッチ:YouTubeで「5分 ストレッチ」と検索
- ヨガ:初心者向けの動画で十分
- 家事を少しだけ:掃除・洗濯の一部だけでも体は動きます
朝の光を浴びる
- 寝起き10分以内に窓辺へ
- 数分でも効果あり
- 体内時計(眠りに関わるメラトニン)を整える
- 続けると、夜眠りやすくなります
無理しないで
- 体力がない日は、寝ていて構いません
- 「動けない自分」を責めないで
- 5分でも動けたら、自分を褒めて
入浴・お風呂
お風呂で温まると、自律神経が整いやすくなります。寝る90分前の入浴がもっとも眠りやすい、と言われます。
- ぬるめのお湯(38〜40℃)で15〜20分つかる
- 入浴剤(バブ・きき湯のリラックス系)でリフレッシュ
- 熱すぎるお湯は逆効果(交感神経が刺激されて眠りにくくなる)
シャワーだけでも構いません
- お風呂が難しい日は、シャワーで十分です
- 「お風呂入らなきゃ」のプレッシャーを、一旦やめていいです
- 2〜3日に1回でも、十分清潔は保てます
★漢方への選択肢
「薬は使いたくない」「依存しないか不安」——そう感じる方は、漢方を試す選択肢があります。漢方は西洋薬と違って、体質を整えながら症状を和らげる考え方です。
不眠・イライラ・不安に
- 抑肝散(ヨクカンサン・ツムラ54番):神経の高ぶり・イライラ・不眠に。市販薬・処方薬どちらも入手可
- 抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ):抑肝散より体力が弱った人向け(胃弱・倦怠感が強い)
思い悩んで眠れない
- 酸棗仁湯(サンソウニントウ):昔から不眠の漢方として使われてきた。思い悩んで眠れないタイプ向け
不安・動悸・喉のつまり
- 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ):不安・緊張・神経性の動悸・「喉に何か詰まった感じ」に。パニック症状にも使われる
更年期世代・女性向け
- 加味逍遥散(カミショウヨウサン):自律神経の乱れに伴う不安・不眠・イライラ。女性ホルモンの揺らぎも整える
入手方法
- 薬局:ツムラ・クラシエなどのメーカー製。薬剤師に「ペットロスで眠れない・不安が強い」と相談すれば、体質に合うものを選んでくれます
- 病院処方:心療内科・漢方外来で保険適用に
- 漢方薬局:体質に合わせた処方を受けられる
市販の睡眠改善薬・サプリ
睡眠改善薬
- ドリエル(ジフェンヒドラミン塩酸塩):花粉症薬と同じ成分の眠気を利用したもの。1〜2日の不眠に
- ナイトミン(小林製薬):睡眠改善・睡眠サポートの製品ライン。商品によって成分が異なるため、購入時に薬剤師に確認を
- 連用は推奨されない(1週間まで)
サプリ
- GABA:ストレス・睡眠の質に
- L-テアニン:リラックス感に
- グリシン:深い眠りに
- 効果には個人差があるので、「自分に合うもの」を試して見つけてください
「依存しないか」という不安について
- 市販品は医療用睡眠薬と違い、依存性は低めに作られています
- でも、長期連用は推奨されません
- 1〜2週間以上不眠が続くなら、受診の方が安全です
受診のリアル——どのクリニックを選ぶ?
「ペットロス症候群」では「何ができるか」をまとめていますが、ここでは「どこを選ぶか」「初診で何を伝えるか」に絞ります。
心療内科と精神科の違い
- 心療内科:身体症状の心因(心身症)に強い。動悸・頭痛・不眠などが中心ならこちら
- 精神科:精神疾患全般。薬の処方が中心になりやすい
- ペットロスの身体症状なら、まず心療内科がおすすめ
クリニックの選び方
- 「グリーフケア外来」がある所:もっとも理想的
- 「ペットロス」を扱う旨を掲げているクリニック
- カウンセリング併設の所
- オンライン診療が可能な所(外出が難しい時に)
- 通いやすい場所(最重要・続けられるかどうか)
初診で伝えること(台本例)
- 「ペットを亡くしてから○か月、○○の症状が続いています」
- 主な症状(眠れない・食べられない・動悸など)を具体的に
- 「薬は使いたくない」希望もOK
- 「漢方で対応できますか」と聞いていい
- 「ペットロス症候群の記事を読んだ」と伝えても構いません
オンライン診療の選択肢
- うららか相談室など、ペットロスを扱うオンライン相談あり
- スマホで完結できる
- 外出が難しい時期に頼れる
- カウンセリングメインのものから医師診療まで、種類はさまざま
費用の目安
- 心療内科:保険適用・初診3,000円前後・再診1,500円前後(自己負担3割)
- ペットロス専門カウンセリング:自費・1回5,000〜15,000円
- オンライン:プラン制が多い(月額・回数制)
仕事を休む選択肢
身体症状が続いて仕事に行けない時、無理する方が結果的に長期化しやすいです。
- 数日〜1週間:有給休暇・体調不良としての休みで対応
- 1週間以上:心療内科で診断書を出してもらう選択肢(傷病名は「適応障害」「うつ状態」など)
- ペットロスでも、実際に診断書を発行する例が増えています
- 周りへの説明:「家族のことで」とだけ伝えれば十分です
- 無理を重ねて長期離脱するより、しっかり休んで回復するほうが、結果的に周りのためにもなります
よくある疑問
参考・出典
- 本記事は、複数の医療・心理関連の監修記事、漢方メーカー(ツムラ・クラシエ等)の公開情報、グリーフケア関連の一般情報を参照して作成しています。情報は変わっていく可能性があるため、特定のURLは命綱を除き掲載していません。
- 具体的な症状・薬の判断・受診は、必ず医療機関・薬剤師にご相談ください。
- よりそいホットライン(24時間・無料・通話料無料):0120-279-338(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター運営)
- 厚生労働省「まもろうよこころ」:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
- 4-7-8呼吸法:アンドルー・ワイル博士(米国・統合医療の専門家)が提唱したリラクゼーション呼吸法。