ペットロス症候群|症状チェックと、つらさを抜けていくために

鉛筆画調のシニア犬イラスト(ペットロス症候群|症状チェックと、つらさを抜けていくためにのアイキャッチ)

ペットロス症候群は、病気ではありません。家族を失った人に起きる強い悲しみの反応の総称で、気持ち・体・暮らしぶりに、いくつもの症状が同時に現れた状態のことです。多くの方は、波がありながらも、数週間〜数か月かけて少しずつ落ち着いていきます。ただし1か月以上、日常生活が大きく回らない状態が続くなら、心療内科や専門カウンセリングが選択肢になります。

この記事でわかること
目次

ペットロス症候群とは何か(病気ではありません)

「ペットロス症候群」は、家族として大切に過ごしたペットを失った後に、強い悲しみの反応が、いくつも重なって現れた状態をまとめて呼ぶ言葉です。正式な病名ではなく、お医者さんが診断書に書く名前でもありません。「症候群」というのは、「いろいろな症状が組み合わさって現れている状態」を指す言葉で、必ずしも「病気」を意味するものではありません。

「燃え尽き症候群」や「五月病」と似た性質の言葉だと考えてください。医療現場で正式な病名として扱われるのは、悲しみが長く・強く続いて、暮らしを大きく妨げるようになった場合の「うつ病」「適応障害」といった別の名前のほうです。それらと区別するためにも、まず「症候群」と呼ばれるあなたの状態は、悲しみの自然な反応であることを知ってほしいのです。

ペットロス症候群チェック(自己診断)

以下は、家族を失った悲しみの中で起きやすい反応をまとめたチェックリストです。該当数が多いほど「病気」ということではありません。「自分のつらさを言葉にするヒント」「助けが必要な状態かを見極める手がかり」として使ってください。

精神面のサイン

  • 涙が止まらない、ふとした瞬間に込み上げてくる
  • 無気力で何も楽しめない、興味が持てない
  • 「あの時こうしていれば」という強い後悔が頭から離れない
  • 怒りの気持ち(病院・家族・自分自身に対して)が湧く
  • 集中できない、考えがまとまらない
  • あの子の鳴き声・足音が聞こえた気がする
  • 気配を感じる、夢に出てくる
  • 「次の子なんて」と言われると深く傷つく

身体面のサイン

  • 眠れない、または眠りすぎる
  • 食欲がない、好きだったものが味気ない
  • 動悸・息苦しさ・胸の圧迫感
  • 頭痛・めまい・吐き気
  • 体がだるい・疲れやすい
  • 体重が短期間で大きく減った/増えた
  • 肩こり・背中の張りがひどくなった

行動面のサイン

  • 仕事に行けない、家事ができない
  • 外出ができない、人に会えない
  • 家族や友人と話す気力がない
  • あの子の写真・遺品を見られない/逆に手放せない
  • お酒・スマホ・買い物などに逃げてしまう時間が増えた

身体症状(自律神経の影響)

「悲しいだけなのに、なんで体まで?」と感じている方へ。家族を失った悲しみは、心だけでなく体にも影響します。心と体はつながっているからです。とくに、自律神経(呼吸・脈拍・体温など、体のリズムを自動で整えている神経)が、強い悲しみのストレスで乱れると、次のような体の症状が現れます。

  • 動悸・息苦しさ・胸の圧迫感:心臓や肺に異常がなくても起きます
  • めまい・立ちくらみ・耳鳴り:血圧の調整がうまくいかなくなることがあります
  • 頭痛・吐き気・胃の不調:おなかの動きを整えている神経が乱れます
  • 不眠・過眠・寝つきが悪い:眠りのリズムが乱れます
  • 体温の調節がおかしい・冷えや火照り:自律神経が乱れた典型的な症状
  • 体がだるい・疲れが抜けない:休息モードに切り替えにくくなる

期間の目安(どれくらい続くのが普通か)

「いつまでこの状態が続くのか」——多くの方が気になる問いです。研究と臨床現場の知見をまとめると、おおよそ次のように整理されます。

最初の数か月(波が大きい時期)

  • 強い悲しみ・涙・無気力が、日常的に押し寄せる
  • 食欲がない・眠れないなど、体の症状ももっとも強い
  • 「現実感がない」と感じる方もいます
  • 多くの方が、数週間〜数か月で「波がありながら少し落ち着く」段階に入ります

数か月〜年単位(波が小さくなる時期)

  • 悲しみは消えないが、日常生活は少しずつ回るようになる
  • 命日・誕生日・お盆などのタイミングで、再び波が来ることがある
  • 1年以上、ふとした瞬間に波が来る方も珍しくありません
  • 「治る」ものではなく、「悲しみと付き合っていく」段階です

「つらい」が止まらないとき

チェックリストで多くの項目が当てはまり、「つらすぎて、もう抜け出せない」と感じている方へ。今この瞬間、命綱の電話番号だけは、もう一度書きます。

重症化のサイン(悲しみが長く重くなった状態)

悲しみが長く・重く続いて、暮らしを大きく妨げたままの状態は、医療現場では特別な扱いをすることがあります。「気合や時間で戻りにくい状態」として、専門的な助けで楽になれる対象として扱われる、ということです。

「重くなった状態」を疑うサイン

  • 死別から半年〜1年以上経っても、強い悲しみが暮らしを大きく妨げている
  • あの子のことを考えると、いつも激しい痛みのような感覚が伴う
  • あの子の死を受け入れられず、現実感がないまま続く
  • 仕事・家事・人付き合いができない状態が、長く続いている
  • 自分の人生に意味を感じられない
  • 自分を傷つけたい気持ち・死にたい気持ちが、繰り返し浮かぶ

医療接続の実際

「病院に行ったほうがいい」とは聞くものの、心療内科や精神科に行ったことがない方には、心理的なハードルが高いものです。少しでも下げるために、実際に受診すると何が起きるかを書いておきます。

心療内科・精神科でできること

  • 話を聞いてもらう:初診は通常30〜60分・症状や経過を聞かれます
  • 診断と説明:「適応障害」「不眠症」「自律神経失調症」などの診断名がつくこともあれば、つかないこともあります(つかなくても受診の意味はあります)
  • 必要に応じてお薬:眠れない・気持ちが落ち込みすぎている・不安が強いときに、体を休めるためのお薬が出ることがあります。「使いたくない」と伝えて構いません
  • カウンセリングの紹介:医療機関内のカウンセラーや、外部の専門家を紹介してもらえることがあります
  • 診断書の発行:仕事を休む必要があるとき、書いてもらえる場合があります

費用と保険適用

  • 心療内科・精神科は健康保険の対象です(自己負担3割の場合、初診3,000円前後、再診1,500円前後)
  • 処方薬もジェネリックなら数百〜千円台が多い
  • カウンセリング(心理士の対応)は自費の場合が多い(1回5,000〜15,000円)

抜けていくための小さな手がかり

「ペットロス症候群を抜ける」とは、悲しみを消すことではありません。身体と生活のリズムを少しずつ取り戻し、悲しみと付き合っていける状態に戻ることです。回復は「する」ものではなく「過ごす」中に少しずつ訪れます。それでも、もし少しだけ動けるなら、次のような手がかりがあります。

体のリズムを最低限戻す

  • 睡眠:眠れなくても横になる。同じ時間に布団に入る。眠れないときは無理に寝ようとせず、温かい飲み物を一杯
  • 食事:1日1食でいいので、何かを口に入れる。固形が無理ならゼリー飲料・スープでも
  • 水分:意識して飲む。脱水は身体症状を悪化させます
  • 太陽の光:朝、数分でいいので窓辺へ。光は睡眠リズムを整えます

気持ちを動かす

  • あの子のことを語る・書く:声に出す、紙に書く、誰かに話す
  • 体を少し動かす:散歩、軽いストレッチ(眠るために)
  • 同じ経験をした人と話す:家族・友人・SNS・コミュニティ・カウンセラー
  • あの子の写真・遺品との距離は、自分で決める。今しまっても、今飾っても、どちらでも

気持ちが向いたとき

形に残す(写真の整理・手元供養・絵やフォトブック)は、抜けていく途中で支えになることがあります。「やるべきこと」ではなく、気持ちが向いたタイミングで選べる選択肢として、知っておいてください。今は焦らなくて大丈夫です。

よくある疑問

「ペットロス症候群」と「病気(うつ病など)」の違いは?
「ペットロス症候群」は正式な病名ではなく、家族を失った悲しみで起きる、いくつもの症状をまとめた呼び方です。一方、「うつ病」や「適応障害」はお医者さんが診断書に書く正式な病名です。症候群が長く・重くなったときに、こうした病名がつくこともあります。境目を判断するのは医師の役割なので、1か月以上強い症状が続くときや、自分を傷つけたい気持ちがあるときは、心療内科・精神科で相談してください。
いつまで続くのが「普通」ですか?
最初の数週間〜数か月は強い症状が出て、その後、数か月〜年単位で波がありながら徐々に落ち着いていくのが一般的です。1年以上、ふとした瞬間に波が来る方は珍しくありません。「治る」ものではなく「波がある」もの、と捉えてください。何年経っても波が来ること自体は「治っていない」のではなく「それだけ深く愛していた」しるしです。ただし、1年以上経っても日常生活が大きく妨げられた状態が続くなら、本記事の重症化サインを参考に、心療内科などで相談してください。
動悸・息苦しさで内科に行ったら「異常なし」と言われました
心電図や血液検査で異常がなくても、家族を失った悲嘆ストレスで自律神経が乱れ、身体症状として出ているケースがあります。心療内科の対象になる可能性が高いです。「ペットを亡くしてから、動悸・息苦しさが続いている」と伝えて、相談してみてください。気のせいや甘えではなく、心と体がつながっている表れです。

ただし、これまで経験したことがない強い動悸・左胸の圧迫感・冷や汗を伴う場合は、自律神経と決めつけず救急外来や循環器内科を選んでください。

チェックに多く当てはまりました。重症ということですか?
該当数の多さだけで「重症」と判断するものではありません。大切なのは、「日常生活が長期間(1か月以上)困難になっているか」「自分を傷つけたい気持ちがあるか」です。後者があるなら、該当数に関わらず、今すぐ命綱の電話番号(よりそいホットライン 0120-279-338)に頼ってください。日常困難が1か月以上なら、心療内科の検討を。それ以外なら、急性期の自然な反応として、少しずつ過ごすことを意識してください。
周囲の言葉や態度で、症状が悪化したように感じます
周囲のストレス(理解されない・心ない言葉・「次の子を」という期待)は、悲嘆反応を悪化させる要因のひとつとして知られています。詳しい対処と場面別の処方箋は、姉妹記事「ペットロスを周りに理解されない|孤独と関係の処方箋」に整理しました。家族の温度差・「次の子を」プレッシャー・「分かってもらおうとしない」選択肢まで、場面別に扱っています。
食べられない・眠れない状態が続きます
食事は1日1食、ゼリー飲料・スープでも構いません。水分は意識して。睡眠は無理に取ろうとせず、横になる時間を確保するだけでも違います。これらが2週間以上続き、改善が見えないなら、心療内科に相談してみてください。短期的に睡眠導入剤や軽い薬で体を休ませることが、回復への近道になることがあります。「薬を使いたくない」と伝えれば、薬以外の選択肢も提示してもらえます。
体重が短期間で大きく減りました
家族を失った直後の、波が大きい時期には、食欲不振で体重が減る方は少なくありません。1〜2か月で2〜3kg程度なら、急性期の自然な反応の範囲内のことが多いです。ただし、1か月で5kg以上の減少や、栄養失調のサイン(めまい・倦怠感がひどい・髪が抜ける等)があるなら、内科で身体の状態を、心療内科で心の状態を、両方確認してください。家族や周囲に「体重が減ってきた」と気づいてもらうのも大切です。

参考・出典

  • 本記事は、複数の医療・心理関連の監修記事および公的機関の一般情報を参照して作成しています。情報は変わっていく可能性があるため、特定のURLは命綱を除き掲載していません。
  • 具体的な症状・治療・受診の判断は、必ず医療機関・専門家にご相談ください。
  • よりそいホットライン(24時間・無料・通話料無料):0120-279-338(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター運営)
  • 厚生労働省「まもろうよこころ」https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
  • お住まいの精神保健福祉センター(各都道府県に設置・無料)
  • ペットロス専門カウンセリング:日本ペットロス協会・日本グリーフケア協会などの認定専門家/オンライン相談「うららか相談室」など

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