マルチーズは、地中海のマルタ島をルーツに持つ、純白の被毛が美しい古い犬種。体は小さくても穏やかで、家族の膝で過ごす時間を何より愛する子が多いです。平均寿命は13〜15歳(アニコム調査では平均13.1歳)。シニア期との向き合い方を早めに知っておくと、穏やかな毎日を積み重ねていけます。この記事では、マルチーズの寿命・かかりやすい病気・シニア期のケアを、できることベースでまとめました。
この記事でわかること
- マルチーズの平均寿命
- シニア期はいつから?(2段階で見る)
- ★かかりやすい病気とサイン(僧帽弁閉鎖不全症に注意)
- 老化のサインに気づく(涙やけ・心臓の見守り)
- 長く一緒にいるためにできること
- 元気な”いま”を、残しておく
上から順に読まなくて大丈夫。気になるところからどうぞ。
マルチーズの平均寿命
マルチーズの平均寿命は13〜15歳。アニコム調査では平均13.1歳と報告されており、超小型犬の中では標準的なクラスに入ります。
主な調査での数値
- アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書」:平均13.1歳
- 一般的な目安(複数の獣医師監修記事):13〜15歳
- 個体差は大きく、15歳を超えて長く一緒に過ごす子も少なくありません
寿命に影響する要素
はっきり解明されているわけではありませんが、マルチーズの寿命に影響する要素として、次のような点が挙げられます。
- 超小型犬であること:一般に、サイズが小さい犬種ほど長生きする傾向があります
- 心臓病が起きやすい:シニア期の僧帽弁閉鎖不全症が、寿命に影響することがあります
- 穏やかな性格:家の中で過ごすことが多く、事故のリスクが比較的少ない
- 飼い主の意識が高い:歴史ある犬種で情報が豊富、ケアの選択肢が広い
シニア期はいつから?(2段階で見る)
マルチーズは超小型犬の区分に入ります。シニア期には「中高齢期」と「高齢期」の2段階があり、それぞれ始まる年齢が違います。
| 段階 | 年齢の目安 | 体の状態 | 意識すること |
|---|---|---|---|
| 中高齢期(入り口) | 7歳ごろ〜 | 見た目は元気・代謝は落ち始める | 予防ケア開始(健診頻度・心臓の聴診・涙やけケア) |
| 高齢期(いわゆる老犬) | 11歳ごろ〜 | 老化のサインが見え始める | 環境整備(滑り止め・寝床)・心臓の精密検査・介護を視野に |
※マルチーズは純白の被毛で見た目が若々しい子が多く、シニア期に入ったことに気づきにくい犬種です。「うちはまだ元気だから」と油断せず、7歳を過ぎたら少しずつ準備を。
シニア期の2段階定義について詳しくは、柱記事「シニア犬は何歳から?|7歳と11歳、2つの節目でできること」でまとめています。年齢早見表や時系列マップもあります。
★マルチーズがかかりやすい病気とサイン
マルチーズには、犬種特有のかかりやすい病気がいくつかあります。とくに「僧帽弁閉鎖不全症」は最注意。小型犬のシニア期に多い心臓の病気で、早めにサインを知っておくと、落ち着いて対応しやすくなります。
1. 僧帽弁閉鎖不全症(★心臓・最注意)
心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」という弁が、加齢などでうまく閉じなくなり、血液が逆流する病気。小型犬のシニア期に起こる代表的な心臓病で、マルチーズはとくに発症しやすい犬種のひとつとされています。初期は無症状でも、ゆっくり進行していくことが多いのが特徴です。
- 乾いた咳が出る(特に夜中や朝方)——心臓が大きくなり気管を圧迫することで起こります
- 散歩で疲れやすくなる、すぐ立ち止まる、歩きたがらない
- 呼吸が浅く、速い(運動していない時の呼吸数が気になる)
- ぐったりして元気がない
- 進行すると、興奮した時や運動後に失神することも
家でできる予防的なケアと観察のポイントは、次の通りです。
- 半年〜年1回の心臓の精密検査(聴診・レントゲン・心エコー)。7歳を過ぎたら必ず入れておくと安心です
- 体重管理。太ると心臓の負担が大きくなります
- 興奮させすぎない。激しい運動や急な来客・大きな音の刺激は控えめに
- 診断がついたら、獣医師の指示に従って適切な内服薬を継続。早めの投薬開始が予後に効きます
- 安静時の呼吸数(眠っている時に1分間に何回胸が上下するか)を時々数えておく。普段30回前後が、急に40回を超えるようになったら受診のサインです
「最近よく咳をするな」「散歩で歩きたがらない」と感じたら、早めにかかりつけ医へ。咳・呼吸の症状は老犬の咳・呼吸で詳しくまとめています。
2. 膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿が本来の位置からずれてしまう関節の病気。マルチーズも小型犬の例にもれず、発症しやすい犬種です。
- 後ろ足を時々浮かせて歩く(スキップ歩き)
- 急に「キャン」と鳴いて足を引きずる
- 立ち上がりを嫌がる、ジャンプを避ける
軽度なら生活の工夫で進行を抑えられます。滑らない床材・適正体重・段差を減らすのが3本柱。詳しくは老犬の足腰が弱ってきたらへ。
3. 流涙症・眼瞼内反(★マルチーズ特有)
涙の通り道(鼻涙管)が詰まりやすかったり、目の構造の影響で涙があふれて目の下に流れ続ける状態が「流涙症」。流れた涙が被毛に付着して赤茶色に変色するのが「涙やけ」です。マルチーズは真っ白な被毛なので、ほかの犬種よりも涙やけが目立ちやすいのが特徴です。
「眼瞼内反(がんけんないはん)」は、まぶたが内側に巻き込まれてまつ毛が目の表面にあたる状態で、刺激から涙が増える原因にもなります。
- 目の下の毛が赤茶色に変色(涙やけ)
- 目のまわりが常に湿っている、独特のニオイがする
- 目をしょぼしょぼさせる、しきりに気にする
- 充血や目ヤニが続いている
涙やけの原因は1つではなく、涙の通り道の詰まり・食事・目の構造・アレルギーなど、いくつかの要因が重なっていることが多いです。後ほどケアの章で詳しく扱います。視覚に関わるトラブルは老犬の視覚・聴覚低下でもまとめています。
4. 慢性腎臓病
シニア期の小型犬に多い、ゆっくり進行する腎臓のトラブル。初期はほとんど無症状で、健康診断の血液検査で偶然見つかることもあります。
- 水をたくさん飲む、おしっこの量が増える(多飲多尿)
- 食欲がムラがち、痩せてくる
- 毛ヅヤが落ちる、ぐったりする時間が増える
- 口臭が変わる(独特のアンモニア臭)
腎臓は一度壊れると戻りにくい臓器ですが、早く見つけて食事と水分管理を整えると、進行をゆるやかにできます。7歳以降は半年に1回の血液検査が、いちばんの安心材料です。
5. 歯周病
小型犬はもともと歯が密集していて、歯周病が起きやすい体質。歯周病が進むと心臓や腎臓にも影響することがあり、見た目以上に怖い病気です。
- 口臭が強くなる
- 歯ぐきが赤く腫れている、血が出ている
- 硬いものを食べたがらない、片側で噛む
歯みがきは「毎日できれば理想、できなくても週数回」で十分です。動物病院での歯石チェックも、年1回受けておくと安心です。
老化のサインに気づく(涙やけ・心臓の見守り)
マルチーズは純白の被毛で見た目が若々しい犬種ですが、シニア期に入ると少しずつサインが見え始めます。マルチーズ特有の「涙やけ」と「心臓の見守り」のポイントも合わせて整理しておきます。
体の変化
- 被毛の変化:純白だった毛にアイボリーがかった黄みが出てくる・ツヤが落ちる
- 体重の変動:太りやすくなる、または逆に痩せてくる
- 筋肉量の低下:後ろ足が細くなる、抱き上げたときに軽く感じる
- 目の濁り:レンズが青白く見える(白内障の早期サイン)
行動の変化
- 散歩のスピードが落ちる、途中で立ち止まる
- 寝ている時間が増える、呼んでも起きにくい
- 段差を嫌がる、ソファに登らなくなる
- 呼びかけへの反応が鈍くなる(聴覚低下の可能性)
マルチーズ特有のサイン
純白の被毛と心臓の繊細さは、マルチーズと暮らすうえで毎日見ておきたいポイントです。
- 目のまわりの涙やけが急に濃くなった:食事・体調・アレルギーが変わったサインのこともあります
- 夜中や朝方の乾いた咳が出る:僧帽弁閉鎖不全症の代表的なサイン。聞き流さずに記録を
- 安静時の呼吸数が増えた:眠っている時に1分間で40回を超えるようなら受診の目安
- 散歩で歩きたがらない、すぐ立ち止まる:足腰だけでなく、心臓のサインのこともあります
- 被毛のもつれ・毛玉ができやすくなる、ブラッシングを嫌がる時間が長くなる
「老化のサインの全体像」は、柱記事「シニア期の時系列マップ」でも整理しています。
長く一緒にいるためにできること
マルチーズだからこそ、日々の小さなケアが10年後に効いてきます。完璧を目指さなくて大丈夫。できる範囲で十分です。
1. 体重管理
マルチーズは「太ると心臓と関節の両方に負担がかかる」体型です。理想は「上から見てウエストがくびれて見える」「肋骨を軽く触れる」。月1回の体重チェックをルーティンにすると、変化に気づきやすくなります。心臓病の進行を遅らせる意味でも、適正体重の維持は大切です。
7歳ごろから体重管理を意識する家庭も、10歳以上のシニア期に入って柔らかめのシニア食に切り替える家庭も。うちの子の噛む力・食欲・体重で選ぶという考え方があります。
2. 滑らない床材
フローリングのまま走り回るのは、パテラと足腰への大きな負担。リビングの動線にカーペットやマット、毛足の短いラグを敷くだけで、関節への衝撃が大きく減ります。シニア期は、ソファや椅子からの飛び降りもなるべく避けて。
小型犬は体が小さく、体温調節も苦手と言われます。滑り止めに加えて夏のひんやり感を兼ねられるタイプを選ぶ家庭もあります。
PR滑り止め+夏の暑さ対策を兼ねたい小型犬向け/広めに敷きたい家庭向けの2タイプ(一例)
3. デンタルケア
小型犬はもともと歯周病が多い犬種。歯みがきは「毎日できれば理想、できなくても週数回」で構いません。動物病院での歯石チェックも、年1回受けておくと安心です。歯周病の慢性炎症は心臓にも影響するので、心臓ケアと地続きの予防になります。
歯ブラシを嫌がる子には、シートタイプや液体タイプという選択肢もあります。無理せず続けられる形を、うちの子との相性で選ぶという考え方も。
4. 半年に1回の健康診断+心臓の精密検査
7歳以降は半年に1回のペースが目安。血液検査で内臓(とくに腎臓)の状態を、年1回は心臓の精密検査(聴診・レントゲン・必要に応じて心エコー)も入れておくと、僧帽弁閉鎖不全症の早期発見につながります。
診断がついたら自己判断で薬を止めず、獣医師と相談しながら継続を。投薬開始のタイミングが、その後の進行スピードを左右することもあります。咳・呼吸まわりの観察は老犬の咳・呼吸も参考にどうぞ。
5. 涙やけケア+心臓の見守り(マルチーズ固有)
マルチーズのケアでとくに大事なのが「涙やけケア」と「心臓の見守り」の2本立てです。純白の見た目と、内側の健康——どちらもマルチーズと暮らすうえで欠かせない柱になります。
涙やけケアでできること:
- 目のまわりを毎日清潔に。コットンやガーゼをぬるま湯やペット用の涙やけローションで湿らせ、やさしく拭きとります
- 目に入った毛をカット。眼瞼内反まではいかなくても、まつ毛・前髪が目を刺激するだけで涙が増えます。サロンや家でこまめに整える
- 食事を見直す。添加物の多いフード・小麦中心のフードを長く続けていると涙やけが強く出る子もいます。フード切り替えは、いきなりではなく1〜2週間かけて少しずつ
- 原因を動物病院で確認。鼻涙管の詰まり・眼瞼内反・アレルギーなど、原因によってケアが変わります。長く続くなら一度受診を
心臓の見守りでできること:
- 年1回は心臓の精密検査(聴診・レントゲン・心エコー)を入れる
- 夜中や朝方の咳・運動後の息切れ・失神のような様子があったら早めに受診
- 安静時の呼吸数(眠っている時に1分間で何回)を時々記録しておく
- 診断後は内服薬を自己判断で止めない、定期的な再診で薬量の調整を
純白を保つことと、心臓を守ること——この2つは、見た目と健康の両方をマルチーズらしく長く保つための大切なケアです。
元気な”いま”を、残しておく
マルチーズと一緒の時間は、純白のふわふわと、穏やかな膝の上の時間で満たされます。いつか、ゆっくりと歳を重ねていきます。「もっと撮っておけばよかった」——そう感じる前に、元気ないまの姿を残しておくのはどうでしょう。
元気なうちに残せること
- 顔のアップだけでなく、純白の毛並みや肉球も
- 膝の上で寝る姿・あくび・甘えてくる仕草こそ宝物
- 声を録音した動画(呼ぶ声、寝息、甘え鳴き)
- 毎月1日に「今月の1枚」を決めて撮る、というルーティンも
「形」に残すという選択肢
写真の延長として、絵や肖像画として残す選択肢もあります。鉛筆画・水彩画・似顔絵——元気なうちにオーダーすれば、あの子の眼差しや純白の毛並みを、専門家の手でじっくり残してもらえます。
もちろん「やる/やらない、両方正解」。形にしてもしなくても、あなたの中の記憶は色褪せません。やる人もやらない人も、両方OK。「選択肢として知っておく」だけで、いつかの選択がしやすくなります。
純白の被毛と、心臓を大切に
マルチーズは、純白の被毛が映える美しい犬種。その内側で、シニア期の心臓は少しずつ変化していきます。外側の純白と、内側の心臓——どちらも見守っていくのが、マルチーズと長く暮らすコツです。
涙やけケア・心臓の精密検査・体重管理・滑り止め・歯みがき——書き出すと多く見えますが、ぜんぶを完璧にやる必要はありません。今日できることを、ひとつだけ。それが10年後の「いっしょにいる時間」を、少しだけ伸ばしてくれます。
慌てず、肩の力を抜いて。シニア期は、関係がいちばん深まる時間でもあります。マルチーズと向き合う時間は、思っているよりたっぷりあります。
参考・出典
- 平均寿命:アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書」(マルチーズ平均13.1歳)
- 一般的な寿命目安(13〜15歳):複数の獣医師監修記事および動物病院の一般情報を参照
- かかりやすい病気・サイン:複数の獣医師監修記事および動物病院の一般情報を参照
- シニア期の2段階定義:柱記事「シニア犬は何歳から?」を参照
- 情報は変わっていく可能性があるため、特定のURLは掲載していません。具体的な症状・治療・ケアの判断は、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。