老犬の目が見えない・耳が聞こえない|サインと、支える工夫

鉛筆画調のシニア犬イラスト(老犬の目が見えない・耳が聞こえない|サインと、支える工夫のアイキャッチ)
この記事でわかること

上から順に読まなくて大丈夫。気になるところだけどうぞ。

「最近、呼んでも振り向かない」「目が白っぽくなってきた」と気づいて検索された方も、いらっしゃるかもしれません。心配な気持ちはとても自然なものです。最初に大事なことだけ言うと——シニア犬の目や耳の衰えは、多くが穏やかに進む加齢の変化です。怖がりすぎず、でも「目が白い」のなかに紛れている例外(緑内障など)を見落とさないように、ひとつずつ見ていきましょう。

目次

こんなサインに気づいたら(見えにくい・聞こえにくい)

「あれ、今までと違うかも」のサインは、暮らしのなかの小さな変化に出ます。気づけたこと自体が、その子にとって大きな支えになります。

  • 物にぶつかるようになった:家具の角・置きっぱなしの荷物・知らない場所
  • 段差で躊躇する/降りなくなった:いつもの段差を見つめて止まる
  • 暗くなると動きが鈍る:夜や薄暗い部屋で歩きたがらない
  • 呼んでも振り向かない:いつもの呼びかけに反応が遅い/反応しない
  • 物音に驚かなくなった:玄関のチャイム・掃除機の音への反応が薄れた
  • 触ると「ビクッ」とすることが増えた:気配を察知しにくくなっているサイン
  • 水やご飯のお皿を探すしぐさ:いつもの場所が見つけにくい様子

加齢による変化と、病気との見分け

同じ「見えにくい」「聞こえにくい」でも、加齢による自然な変化と、治療や経過観察が必要な病気とがあります。家で完全に見分けるのは難しいので、ここでは「考えられるもの」を整理します。

目に起きていること何が考えられるか視力への影響
水晶体が青白く見える核硬化症(加齢の自然な変化)ほとんど影響しないことが多い
水晶体が真っ白く濁る白内障進行すると視力が落ちていく
目が赤い・痛がる・腫れる緑内障・結膜炎・角膜のトラブル緑内障は急いで受診(後述)
目やにが増えた・粘度が変わった結膜炎・涙のトラブル・ドライアイ続くなら受診
耳に起きていること何が考えられるか対応の目安
少しずつ反応が薄れてきた老人性難聴(加齢の自然な変化)暮らしの工夫で穏やかに
耳をかゆがる・首を振る・においがする外耳炎・耳ダニ・腫瘍受診で治療できることが多い
片耳だけ反応が違う片側の異常(中耳・内耳)受診を

「目が白い」は白内障? ほとんどは核硬化症

「目が白くなってきた」と気づいて、白内障が心配で検索された方も多いと思います。でも、シニア犬の「目が白い」のほとんどは、核硬化症という加齢の自然な変化です。視力への影響はほとんどなく、慌てなくて大丈夫なことが多いです。

核硬化症は、水晶体の中心がだんだん硬くなって、光のあたり方で青白く・薄水色っぽく見える変化です。6〜7歳ごろから少しずつ始まり、多くの犬で見られます。視力への影響はほとんどなく、治療も不要と言われています。「光って白く見えるけど、ぶつからずに歩けている」なら、まず慌てなくて大丈夫です。

一方、白内障は、水晶体のタンパク質そのものが変性して真っ白く濁る病気です。進行すると視力が落ち、ぶつかったり段差で躊躇したりするようになります。原因には加齢・遺伝・糖尿病など複数あります。

観点核硬化症(加齢)白内障
見え方青白く・薄水色っぽく真っ白く濁る
視力ほぼ影響しない進行で落ちていく
行動普段通り動けるぶつかる・段差で迷う
対応経過観察でOK獣医師と進行を見守る

白内障|進行・目薬・手術と「見え方」のこと

白内障と診断された場合、多くは「進行を緩めながら、残っている視力を活かして暮らしを整える」のが現実的なゴールになります。「完全に治す」を目指すより、その子と一緒に穏やかな時間を作る工夫が中心です。

  • 目薬・点眼薬:進行を遅らせる目的で処方されることがあります。ただし、効果のはっきりした証拠は限られており、獣医師の間でも見解が分かれているのが現状です。「使えば必ず進行が止まる」というものではないことを踏まえたうえで、かかりつけと相談して使うかどうか決めてください
  • サプリメント:補助的に勧められることがありますが、有効性が証明されたものは少ないのが正直なところです。期待しすぎず、続けるかどうかも獣医師と相談してください
  • 手術(人工水晶体の挿入):眼科専門の動物病院で行われますが、高齢になるほど麻酔のリスクが上がるため、シニア犬には現実的でないこともあります。獣医師と相談を
  • 続発症の予防:白内障が進むと、ぶどう膜炎や緑内障といった別の病気につながることがあります。定期的な眼科チェックで早期に気づくことが、本人の快適さに直結します

★緑内障の急性発作|急いで受診すべきサイン

この章だけは、急いでお伝えします。犬の緑内障の急性発作は、24〜72時間(数時間〜数日)という短い時間で永久に失明することがある緊急の眼の病気です。早期に治療できれば視覚を残せる可能性があるため、思い当たるサインがあれば、夜間でも迷わず動物病院へ。「明日の朝まで様子を見よう」が、視覚を失う選択になることがあります。

家での工夫|段差・水・餌・声かけ

視力や聴力が衰えてきても、家のちょっとした工夫でその子の世界は穏やかに保てます。「いつもと同じ」を大切にすることが、いちばんの安心です。

家具の配置を変えない

視力が落ちてきた子は、家の地図を記憶で歩いています。模様替えや、置きっぱなしの荷物が新しい障害物になります。配置を変えるときは、少しずつ慣らす時間を作ってください。

水と餌の位置は固定する

お皿の場所が変わると、見つけられずに迷います。同じ位置・同じお皿で続けてあげると、目が見えなくなっても自力で食べ・飲めます。来客や掃除のあとに動かしたら、元に戻すのを忘れずに。

段差にはスロープ・滑り止め

段差を見極めるのが難しくなります。スロープを置く・滑り止めマットを敷く・ソファや階段からの落下を防ぐ柵を考えると、けがが減ります。

触る前に「声かけ」と「足音」で伝える

急に触られると「ビクッ」とします。「これから触るよ」と声をかけ、近づくときは足音を意識的に出して、気配を伝えてあげてください。これだけで噛みつき防止にもつながります。

散歩は短く、知ったコースで

新しい場所より、知っているにおいと道を歩くほうが安心です。短い距離を、その子のペースで。リードはやや短めにして、危険物に近づく前に方向を変えられるようにしておきます。

耳が聞こえなくなってきた子の暮らし

耳が遠くなってきた子には、「声」以外の合図を使っていきます。振動・触覚・視覚(見える子なら)の3つが、新しい会話のことばになります。

  • 振動で気づかせる:そばに行く前に床を軽くドンッと踏む。寝ているときに起こすときは、近くの床から伝える
  • 軽く触れて合図する:肩や背中を優しく1回タップ。「これは触れたよ」のサインとして覚えてくれます
  • 視覚の合図(見える子の場合):おやつを見せる・手を振る・ライトをつけたり消したり。視覚と触覚を組み合わせると伝わりやすいです
  • 嗅覚で誘導する:おやつのにおいで安全な場所へ誘導。声よりずっと届きやすいです
  • 留守中の安全:聞こえない子は、火災報知器の音や来客に気づけないことがあります。見守りカメラ・段差の柵などで、不測の事態を減らしておきましょう
  • 知らない人や子供への注意:気配を察知できず驚いて噛むことがあります。「うちの子は耳が遠いです」と先に伝える・近づく前に飼い主が知らせる、を習慣に

よくある疑問

目が白くなってきました。白内障ですか?
シニア犬の「目が白い」のほとんどは、核硬化症という加齢の自然な変化で、視力にはほとんど影響しません。一方、白内障は水晶体が真っ白く濁って視力が落ちていく病気です。家での見分けは難しいので、健康診断のタイミングで一度、獣医師に見てもらってください。「核硬化症でしたよ」と分かれば、ご家族の不安が大きく軽くなります。
うちの子、ちゃんと見えていますか?
家でできる目安として、暗い部屋で物にぶつからずに歩けるか・段差を躊躇せず降りられるか・知らない場所でも歩けるか、を観察してみてください。視覚が落ちてきても、明暗や動くもののシルエットは見えていることが多く、嗅覚と聴覚で世界を感じる力は私たちが思うよりずっと豊かです。具体的な見え方は、診察で先生に診てもらうのが確かです。
白内障の手術は受けるべきですか?
手術は眼科専門の動物病院で行われますが、シニア犬は麻酔のリスクが上がるため、現実的でないこともあります。「目薬の併用と、暮らしの工夫で支える」を主軸にする選択も、その子のためになります(ただし目薬の効果は獣医師の間でも見解が分かれており、確実なものではありません)。手術の可否は、年齢・全身状態・白内障の進行度を踏まえて、かかりつけと眼科の先生と相談して決めるのがいちばんです。
目薬やサプリで白内障は治りますか?
残念ながら、目薬やサプリで白内障を完全に治すことは難しいとされています。「進行を緩める」目的で処方・販売されているものはありますが、その効果がはっきり証明されているとは言いがたく、獣医師の間でも見解が分かれているのが現状です。期待しすぎず、進行を見守りながら、家での暮らしを整える方が、その子の快適さに直結します。「治る」より「穏やかに付き合う」を主軸にしてください。
急に目が赤くなって、痛がっています。緊急ですか?
緊急性が高い可能性があります。緑内障の急性発作は、24〜72時間(数時間〜数日)で永久に失明することがある眼の病気で、早期治療で視覚を残せるかどうかが分かれます。夜間や休日でも、迷わず救急対応の動物病院に連絡してください。「明日の朝まで様子を見よう」が、視覚を失う選択になることがあります。
目やにが毎日出ています。気にしなくていいですか?
少量で、色が薄い茶色〜黒っぽい程度なら、加齢に伴うことが多く、優しく拭き取れば大丈夫なことがあります。一方、黄色や緑っぽい・粘度が強い・量が増えた・目が赤い・しょぼしょぼするのいずれかがあれば、結膜炎や角膜のトラブル、緑内障の可能性もあります。受診をおすすめします。
呼んでも振り向きません。耳が遠いのか、認知症なのか分かりません
どちらの可能性もあり、家で完全に見分けるのは難しいことが多いです。「物音にも反応しないか」「足音や振動で気づくか」「日中はしっかりしているか/夜だけ吠えるか」などをメモして、健康診断のときに伝えてみてください。獣医師が手がかりにします。気になる方は、夜泣きや認知症の記事も合わせてご覧ください。
触ろうとすると「ビクッ」とするようになりました
見えにくい・聞こえにくいことで、気配を察知しにくくなっているサインのことがあります。触る前に声をかける/近づくときに足音を出す/触る前に手を見せる、を意識すると、驚かせずに済みます。これだけで噛みつき防止にもつながります。

参考・出典

  • 本記事は、複数の獣医師監修記事および動物病院の一般情報を参照して作成しています。情報は変わっていく可能性があるため、特定のURLは掲載していません。
  • 具体的な症状・治療・薬の判断は、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。

関連する読みもの